週イチ日記

2013.03.11

笑顔のちから

毎朝、同じ道を歩きます。 通勤です。
商店街まで出ると、駅はすぐそこです。商店街に出るまでには、昔ながらの細い路地があったり、しもた屋や長屋が並んでいます。
「おにいちゃん」
長屋の前のおばあちゃんが話しかけてきました。齢80歳ぐらい。手押し車のフタの上に座っています。よく見かけるおばあちゃんです。
「はい」私は立ち止まり、おばあちゃんの方を見ました。「どうしました?」
話をするのは初めてでした。目が合えば、軽く会釈する程度です。
「おにいちゃん、お金貸して」
「おっ、お金? ・・・貸してって、どうかしたん?」
びっくりしました。第一声が、お金とは思っていませんでした。
おばあちゃん。 とても笑顔です。
「お金って、いくらですか」
「100円」 「100円?」
まさかの100円です。
「何に使いますのん」座ったままのおばあちゃんに近づく私。おばあちゃんは笑顔のままで言いました。
「ジュース買うねん」
「ジュース!? ・・・ジュースかぁ」
“そうか。 ジュース買いたいのかぁ“
かばんから、財布を取り出します。
「100円でいいんですね」気づけば、何の抵抗もなく、笑顔でちょこんと
座っているおばあちゃんに、100円玉を差し出していました。「貸すんですからね」
おばあちゃんは何も言わず、とっびきりの笑顔のままで100円玉を受け取りました。
「おばあちゃん。 何のジュース飲みますのん?」尋ねると、おばあちゃんは笑顔で
答えました。
「ジュース買うねん」
とびっきりの笑顔で、座ったままのおばあちゃんです。
通勤中です。電車の時間があります。先に進まなければなりません。歩きながら、数度
振り返りましたが、座ったままのおばあちゃん。動く私に、動かぬおばあちゃん。
おばあちゃんが視界から消えました。
その後、おばあちゃんがジュースを買ったかどうか分かりません。そして、あれから
ずいぶん日も経ちましたが、100円玉は返ってきていませんし、手押し車のフタに座ったおばあちゃんは、その後も通勤中の私を、毎朝 笑顔で見送ってくれます。
私はその笑顔に応え、軽く会釈します。
笑顔がもつ威力に完敗した私は、フタの上に座った人生の先輩を見て、実感しました。
笑顔って、すごいなぁっと。

コメント

コメントフォーム

ブログ内検索

カレンダー

«3月»
     1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31       

大阪中央合同事務所

〒541-0045
大阪市中央区道修町2-5-9
イトヨシビル4F
TEL:06-6205-5858
FAX:06-6205-5859

ページの先頭へ